リハビリテーションには理学療法や作業療法、言語聴覚などいろんな種類があります。
セラピスト(療法士)になるには、国家試験の合格が必須です。
その国家試験を受けるには、学校で3年や4年、必要な技術や知識を身につけなければなりません。
卒業試験といって、卒業するための試験がある学校もあります。
また、セラピストが必ず通らなければならない壁、それが
「実習」です。
先輩や学校の先生から
「実習が一番大変」
「実習で何度も挫けそうになった」
などの話を聞いており、実習に対して恐怖心を抱いている学生さんは多いのではないでしょうか?
そのようなこれから実習に行かれる学生さんに向けて、
実習に行く前にしておいてよかったことやしておくべきだったこと
実習時の注意点
などを実際に実習を経験したセラピストの声をまとめてみたので参考程度にご覧ください。
実習では実際にどのようなことをするの?
作業療法実習には
臨床実習Ⅰ(病院や施設見学)
臨床実習Ⅱ(評価)
臨床実習Ⅲ・Ⅳ(臨床)
病院や施設見学は1日〜2日、評価実習は3週間、臨床実習(長期実習)は8〜10週で行われるところが多いです。
※実習期間や時期は学校によって違うため確認してください
作業療法学生が行く、実習分野としては
・身体障害分野
・精神障害分野
・発達障害分野
があります。
私が通っていた学校では、見学にはそれぞれの分野の病院や施設など3・4箇所程度行かせていただきました。
評価実習は1回ですので、3つの分野のどれか一つを選び、行かせていただきました。
見学実習では、病院や施設とはどのようなところなのか?患者さんや利用者さんはどのような症例がいるのか。そこで作業療法士がどのような仕事をしているのかなど現場の状況を知ることが目的です。
評価実習では、2年間学習した知識を活かし、評価能力を身につける実習です。患者さんの求めているものや、治療するべきところなど考え、勉強してきた専門的な知識を取り入れながら、優先順位をつけたりリハビリの目標設定を作成できるようになることが目標でした。
臨床実習では、実際に症例(患者さん)を何人か担当させていただき、評価からアプローチまで作業療法士としての一連の流れを経験します。学校で学んだ専門的な知識や評価実習で学んだ評価方法・目標設定の考え方を活かして、実際にセラピスト同様患者さんを担当させていただくため、今までとは違う責任感も生まれます。
実習で大変なことは何?
実習において、レポートは必須でした。私が実習に行っていたときは、ケースノート、デイリーノート、レポートの3つを提出していました。
毎日書いているうちに、少しずつ書き方にも慣れてきますが、一日のうちで学んだことや症例の方の情報収集、アセスメントなど、一度に多くの情報を持ち帰り記録しなければなりません。実習先にも課題の量は全く違うと思いますが、より良い症例レポートを作成する・アプローチをするために、慣れないうちは情報量がどうしても多くなるので、記録もその分多くなります。
実習では、学校で学ぶことができない貴重な体験が多いです。実際の症例は既往歴があったり、服薬状況や栄養状態、性格などでも教科書通りにはいきません。実習先では知らないことがたくさんあるため、その都度調べることも多くなっていきます。私が行っていた実習先では、「分からない専門用語・医療用語をまとめるノート」も提出していました。それは、実際に口には出しているけど説明できないものやバイザーの先生に聞かれて答えられなかったことなど、とにかく分からないと思ったことは全て調べて文字に起こしてまとめておく用のノートでした。
学校と病院の環境が全く違います。実習は1人や2人程度の少ない人数で行くため、“見られている“という意識を強く感じてしまいます。
また、馴染みのない場所であるため、施設内状況の把握やスタッフや他部署の方の名前や顔を覚ることなど、刺激になることや覚えることも多いため、まずはその場に慣れることだけでも一苦労です。
そのため、いくら実習先の先生や症例の方の人柄がよく、馴染みやすそうな環境でも実際にはストレスを感じてしまう人が多いと思います。
今までは、学校で仲の良い友達と一緒に勉強ができていましたが、実習ではその友達もみんな違う病院・施設に行きます。遠方に配属される方もいるため、アパートを借りて1人暮らしをしながら実習に挑まなければならない方もいるでしょう。そのため、すぐに友達や先生を頼ることができない孤独感を感じる方は少なくないと思います。
実習では、担当になって指導してくださる先生や症例の方との信頼関係を築くことが大切です。ですが、コミュニケーションや表現が元々苦手だという方は、慣れない環境で初めて合う人との関係性を築くことが大変だと感じてしまいますよね。作業療法の評価実習や臨床実習はとても長いです。そのため、良い関係性作りや適度な距離感の取り方など、学校では気にしていなかったことでも、実習では気にして行動しなければなりません。それをストレスに感じてしまう方もいると思います。
実習前にしておくべき事は何?
実習では最初のうちは見学をする時間が長いと思われます。実際に患者さんに対してするに「アプローチしてみて」と言われることは少ないかと思われますが、「肩関節の角度測ってみようか」「HDSーRとってみて」と提案されることはありました。学校では出来ていたことも実際に臨床で患者さんを目の前にすると緊張して、やり方を忘れたり、覚えていたことも抜けてしまったりと焦りが生じます。そのため、評価で学んだ知識や技術は友達同士で何度も練習しておいて身につけておいた方が良いかと思います。
大変なことでも挙げたレポートですが、先輩方や先生からどのようなレポートを作成するのか、見せてもらうことが可能です。実習先によってレポートの形式は変わって来るかとは思いますが、中には学校のやり方でというところもあれば自分自身で考えて作成しなければならないところもあります。一から文章を作り出すよりも、ある程度レポートの雛形(日付・評価・アセスメントなどの大まかな分類)がある方が、その流れに沿って内容を入力して行けば良いため、レポートがスムーズに作成できるかと思います。
学校で使う教科書の量はとても多いですし、一つの本の中でもさまざまな分野の内容が詰め込まれているものもあります。実習課題をする際は調べ物が多いですし、時間も常に追われている状況かと思われます。そこで、すぐに教科書で調べられるように、インデックスをつけておくことがおすすめです。インデックスで分類をしっかりと分けておくことで、どこに何が載っているのか分かりやすく、さっと開くことが出来て時間を有効に使うことができます。
精神科実習では、自分でレクレーションを提案して、必要な道具を作って実際にレクレーションを開催しなければならない実習先もあります。精神科では毎日レクレーションを行われているところが多いため、すでにあるもの以外を提案しなければならないとなると、レパートリーが少なければなかなか思いつくのが難しいです。実習に行く前に、患者さんに提供しやすそうなレクレーションの選択肢をできるだけ多く持っておくことで、時間の削減にもなりますし、スムーズに作業に取り組むことができるかと思います。
レポートはパソコン入力で行うところがほとんどかと思います。レポートは莫大な文字数を入力する必要があるため、できるだけタイピングが早くできるよう練習しておいた方が良いと思います。タイピングが遅い人と早い人では課題が終わるのに数時間も差が出る場合もあるため、今のうちに苦手を克服しておきましょう。
実習時の注意点
学校によってはヘアカラーが許可されているところもあるかと思いますが、実習前に黒染めをしていても不自然に見えたり、すぐに色落ちする場合があるため、印象が悪くなってしまう可能性があります。実習に行く直前ではなく、数ヶ月前からヘアカラーには気をつけておくのがお勧めです。また、女の子は髪を結ぶときも横髪を出したくなりますよね。ですが病院では前髪が長すぎたり横髪が垂れていたりすると清潔感がないと思われる場合もあります。男性でも髭が無造作に生えていたり、髪がボサボサなままだと注意される可能性があります。見た目に無頓着な方も患者さんが安心できるようにと考えて身だしなみに注意しておくと良いかと思います。
挨拶は社会人として必須だと思います。当たり前のことではありますが、元気に笑顔で挨拶をすることで相手に良い印象を与えますし、「元気をもらう」といってくださる患者さんもいました。挨拶は意外とタイミングが難しかったり恥ずかしいと感じる方もいるそうです。社会人として挨拶は必ず行えるよう、日頃から気にかけておくと良いかと思います。
また、先生や患者さんから何かを聞かれたときに、黙り込むのではなくすぐに返答することも重要です。先生方も仕事をしている忙しい中で指導をされるので、「自分は〜だと考えますがどうでしょうか」や「すみません、分からないので調べてきます・教えていただいても良いでしょうか」など返事や対応をすることが大事です。
実習期間は慣れない環境や課題のストレスなどで、疲れが多く溜まってしまいます。課題があっても、家に帰ると一旦寝て夜中に起きてレポートをするという方も多く耳にします。疲れやすい実習期間であるからこそ規則正しい生活と睡眠の質は大事です。実習先で疲れた表情を患者さんに見せてしまうこともよくないですよね。食事や睡眠をしっかりととるということが難しくなってしまう期間でもあるので、少しでも体に違和感を感じた時は、生活や時間の使い方を見直し、先生に相談してみるといいと思います。
まとめ
今回は、作業療法学生さんに向けた実習に行くために必要なことをまとめてみました。
学校や実習先によって、必要なことや勉強するべき内容は変わって来るかと思いますので、参考程度にご覧いただけると良いかと思います。
実習をするのは学生のうちですが、実際に働くときにとても役に立つ経験ですし、学校では学ぶことができない貴重な時間です。社会人としてのマナーはどの実習先に行ってもどの仕事に就いても大事なことなので、行く前の学校生活から身につけておくことが大切だと思います。
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